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タービンディスク被削材の旋削加工

耐熱合金とチタン合金は、加工が難しい被削材です。これらは他の金属との類似性が無く、特殊なものです。これらの被削材には、強度/重量比、高温でも強度と硬度を維持すること、卓越した耐腐食性といった非常に優れた特性があります。
しかしながら被削材としては加工が難しく、「特殊な」ソリューションを必要とします。これらの被削材は効率性、安全性および良好な加工結果を達成するために、専用工具および慎重に選定した加工方法とツールパスによる万全の準備が必要になります。この概要では、旋削加工における性能と加工安定性を向上させた加工需要とそれに対応する開発について説明しています。

ユニークな部品特性、難しい加工

ワーク素材の加工特性は、金属加工における必要条件と結果に影響を及ぼしそれらを決定する、いくつかの要因によって決定されます。これは非常に広い意味において、発生する工具摩耗の傾向とどのように切りくずを形成することができるかということに関しての、切削されるワーク素材の加工特性のことです。大まかに言って、これらの特殊な被削材の加工特性は良好なものではありません。特殊な被削材は切削が難しいものとされていますが、正しい方法でアプローチすれば難しいものではありません。
比較的一般的なワーク素材のうちのより特殊なものは、耐熱合金 (ISO S) グループとして耐熱合金 (HRSA) とチタン合金に分類されています。加工については、これらはすべて、組成、加工条件および特性に応じて、いくつかのサブグループへ分割することができます。Sに分類された合金の化学的性質および冶金組成は、物理的特性、結果的には加工特性を決定します。切りくずが細分化されてしまうため、一般に切りくず処理は一般に難しいものとなり、固有の切削抵抗が鋼の2倍となることも珍しくありません (これは被削材を切削することがどれくらい難しいかを直接に測定するもので、切削抵抗と必要な動力を決定するものです)。
耐熱合金 (HRSA) 被削材の切削が難しいことの主な理由は、高温でも高強度を維持することにあります。HRSAは、ほとんどの他の被削材のように柔らかくなったり流れたりしません。またHRSAは容易に加工硬化します。高い機械的負荷および相当な熱が刃先に集中します。ニッケル、鉄またはコバルトベース合金は、耐熱合金 (HRSA) のサブグループに属し、部品として使用するにあたって有利な特性が融点近くまであまり変化しないというユニークな特性のため、主として航空宇宙産業、エネルギー産業および医療機器産業において使用されています。またこれらの合金には、非常に優れた耐腐食性があります。しかし加工特性の観点からすると、それらは適切な機械、高剛性のセットアップ状態、専用のチップ材種およびブレーカ、最適化されたクーラントの適用、そして最後に、しかし特に適切な加工方法および工具アプローチを必要とします。間違いなくより多くの準備が必要になり、製造のフロント・エンドにはより多くの作業が求められます。
チタン合金もまた、さまざまな加工特性レベルによりサブグループに分割されます。一般的に加工特性は、工具と加工方法に関して非常に特殊な要求をする、さまざまな加工に対する難点 (難しさ) の度合いに従って評価されます。低い熱伝導率、高温時の高強度、摩滅傾向がある細かくせん断された薄い切りくず、チップすくい面に生じる狭い接触領域、および刃先近くへの高い切削抵抗の集中への対策が求められます。切りくずは周期的に形成されることがあり、切削抵抗の変動をもたらします。また、いくつかの合金は比較的高レベルの超硬材を含んでいて、被削材の摩耗性を非常に高くします。過度の切削速度は切りくずと工具被削材の間の化学反応を生じさせることがあります。刃先の突然のチッピング/破断や、刃先への被削材の固着/溶着が起きることもあります。またいくつかの合金は容易に加工硬化し、拡散摩耗タイプの摩耗を生じさせることがあります。これが、過度のバリの発生に繋がります。さらにこのことにより高速加工が困難になることもあります。
本当に特殊な性質と言えますが、多くの耐熱合金 (HRSA) やチタン合金の良好な加工の可能性は、比較的狭いものになります。

難削材の旋削加工

難削材の旋削加工は、被削材と加工要素の組合せの影響のバランス調整に左右されます。良好な結果に大きく寄与する基本的な経験則があります:

  • 適切な加工方法をできる限り詳細に事前計画する
  • 最良の工具アプローチを確立する
  • 最良の工具アプローチを確立して、非常に安定性の高いツールホールディングを使用する
  • 最適な新しい、専用切削工具技術を使用する
  • 加工安定性および生産性を確立するために、適正な切削条件を適用する
  • 予測切削用のスパイラルカッティングレングスの計算を使用する
  • クーラントを適切に適用する — 最新の高圧ソリューション
  • スペシャリストの推奨事項とサポートを利用する

加工プロセスは、被削材の状態/条件への検討などに関係する、重要で決定的な要因であるため、常に慎重に計画される必要があります。鋳造、鍛造、棒鋼、熱処理、ソリューションの取扱いおよび時効は、加工部品に大きな影響を与え、工具および加工方法の選定に影響を及ぼすことになります。硬度と同じように、加工物表面の状態によっても加工を変更する必要が生じたり、加工に影響を及ぼすことがあります。旋削加工に関する戦略は、加工する部品の設計特性による要求、そして荒加工 (第一段階)、中仕上げ加工 (中間段階) および仕上げ加工 (最終段階) の各段階に関する要求を含むものでなければなりません。一般に複雑な仕様と表面完全性が問題になります。

特殊な被削材の旋削加工を計画する場合は、部品の設計、被削材および加工条件がベースです。適用可能な場合は、被削材の状態および品質要求との関連において、どのように第一段階、中間段階および最終段階の加工を実行するかを規定する必要があります。プログラミング時のツールパスの計画および低い送りの使用は、摩耗の範囲、工具のタイプ、サイクルタイムおよび安全性を決定します。

難削材における切削アクション

加工物への刃先のアプローチにより大きな影響を受けます。チップブレーカとの組合せにおける刃先の切込み角は、性能、工具寿命、安全性および結果を左右します。チップ形状は、行われる切削との関連で選定する必要があることも稀ではありせん。しかしながら、浅い切込み角の使用が性能と工具寿命に寄与するという事実は、常に加工に関する主要な考慮事項でなければなりません。
チップ材種の選択は、部分的には切込み角に関連して行なう必要があります。とりわけ、この角度は、刃先にノッチを形成する摩耗タイプに影響を及ぼします。ノッチのサイズは結果に影響し、早期の工具破損を引き起こすことがあります。適切な加工にアプローチすることは、高生産性の能力があるチップ材種を選択できることを意味します。一方、これが長い工具寿命および加工安全性も提供します。


切削工具の切込み角は、切りくず厚さ、送り速度、切削抵抗、そして可能な切削タイプに影響します。特殊な被削材では、角度の選択は生産性と加工信頼性に直結し、チップ形状とノーズR、および工具被削材の良好な利用に影響を及ぼします。一般に丸チップとXcel(エクセル)チップが最適です。

工具材質 (チップ材種) の選択は、荒加工、中仕上げ加工または仕上げ加工のどのタイプの旋削加工が行われるのか、および加工物の状態と切削タイプ同様、による影響を受けます。これらの被削材の硬度により、刃先の塑性変形は、チップ材種を選択する場合の主なリスク要因として常に考慮されるべきです (境界摩耗は前述の通り、主に切込み角と切込みによって影響を受けます)。チップ材種は、それがアプローチ、加工負荷および連続切削であるか断続切削であるかにより評価されるべき強度の問題であるため、チップ形状とも組合せて選定する必要があります。従って、耐熱合金 (HRSA) 加工には専用材種が極めて重要です。
高レベルのチップ高温硬度、適切なレベルのチップじん性およびチップコーティングの十分な溶着は主要な必要条件です。ポジブレーカ、シャープな刃先、高強度の刃先および比較的オープンなチップブレーカは、これらの被削材用の刃先交換式チップの特徴となっています。
最適な切削条件の確立は、これらの被削材の加工に成功するために不可欠です。切削速度は、速度、送りおよび切込みの組合せに制限されますが、高レベルの生産性、安全性および品質を実現するために最適化することができます。切削速度は、発熱およびそれがどのようにチップに影響するかに関係しています。切削速度は切りくずが十分な可塑性を持つように十分に高くなければなりませんが、工具材質のバランスを失うほどに高すぎないようにする必要があります。専用超硬チップの場合、速度は通常、130~260 sfm (40~80m/min) の範囲です。セラミックチップでは、490~1310 sfm (150~400m/min) の範囲です。
送り速度は加工時間と切りくず厚さに影響する主要要因です。特殊な被削材においては、限界値が比較的厳しいため送り速度はより慎重にバランス調整する必要があります。荒加工においては、切りくずを最大限にしなければなりませんが、刃先に過負荷がかからないようにします。一方、仕上げ加工においては、切りくずは過度の発熱と加工硬化を防ぐことができるほど十分に厚くなければなりません。
切込みが刃先のアプローチに影響することも稀ではありません。従って、一定の値未満でなければなりません。例えば、耐熱合金 (HRSA) の加工に丸チップを使用する場合、切込みはチップ径の15%を超えてはなりません。切込みもまた、倣い加工の場合には慎重にプログラムしなければなりません。凹部またはショルダー部の加工では、刃先の食いつきの適切な弧を超過しないようにします。
工具寿命については、スパイラルカッティングレングス (SCL) を使用して、広範囲に加工することが重要です。これが正しく行われるということは、チップ交換のための機械停止を予想し、プログラムすることができるということであり、そして、工具を適切な速度で使用するなら、切れ刃が求められている加工面品質を維持できなくなることなく切削パスを完了できるということでもあります。


スパイラルカッティングレングスの計算により、加工時間を短縮します。また、加工が難しい特殊な被削材において、加工面品質を改善するように加工時間または切込み長さを予想する際の手助けになります。そして、工具寿命と機械の稼働率を最適化するために加工と切削条件を良好に適合させるスパイラルカッティングレングスを使用して、チップ交換のための機械停止を計画します。

工具摩耗は

工具摩耗は、高い刃先の温度と特定のタイプの刃先摩耗が進行する傾向との組合せによる高い切削抵抗により、大きな影響を受けます。主なものは前述の境界摩耗です (切込みが被削材の範囲を設定する機械的摩耗タイプ)。刃先の塑性変形 — 高温と高圧、そして主に高硬度の被削材によってもたらされるこすり摩耗の3要因が組み合わされた結果です。もう一つのタイプは、刃先表面のコーティング層が切り取られているセラミックチップで広がるトップスライス摩耗です。刃先のアプローチが主要要因です。


他の被削材とは異なり、特殊な被削材においてはチップ材種の選定は荒加工および仕上げ加工に直接関係するものではありません。材種の選定は単なる最適化要素ではなくもう少し複雑で、チップの形状、刃先のアプローチおよび加工タイプのに左右されます。ここに示した境界摩耗および塑性変形のような破壊的な摩耗パターンは、主に適切な工具、切削条件および加工方法の組合せにより対処する必要があります。最新のサイアロン系セラミックチップに加えて、超硬チップおよびウィスカーセラミックのいくつかは多くの場合、最適で、広く適用可能な選択肢です。

特殊な被削材を旋削加工する場合の最適な切込み角は、45度以下の小さな角度です。切込み角が90/0度、または切込みがチップのノーズRより大きい場合、加工条件は最悪となります。大きい/小さな角度は、薄い切りくずおよび高送りを意味します。
耐熱合金 (HRSA) を旋削加工する場合、工具の切込み角が、PVDまたはCVDコーティングチップのどちらが最適かを決めることになります。これは熱の影響に対する保護に関係することです。PVDは90/0度の切込み角、CVDは45度の切込み角に適しています。一方、チタンの旋削加工はチップコーティングによるメリットがありません。この場合、より重要なのは最適な刃先条件 (例えば、仕上げ加工における丸チップ) を保証することです。PVDチップの新しいファミリーは高硬度で、刃先の変形および熱亀裂に対する良好な耐性を発揮します。シャープな刃先とのコンビネーションで、これらのチップは溶着性のある被削材の荒加工~仕上げ加工においも優れた性能を発揮することができます。

適切なチップ形状

チップ形状は、これらの被削材を加工する場合の重要な要因です。丸チップ (R形) は、これらの被削材向けの主な推奨チップの一つになりました。丸チップは、シャープでポジティブな刃先の強度を高め、高送り速度が可能で、長い刃先に沿って切りくず厚さが変化し、チップRが大きく、加工面品質を生み出すために送り速度を制限することがありません。丸チップは、さまざまな部品形状のために求められる倣い加工およびポケット加工を行なうために、プログラミングの柔軟性も提供します。
正方形チップ (S形) は45度の角度でざまな方向への荒加工が可能で、いくつかの場合、第一段階の加工に最適です。ひし形チップ (C形) はツールパスに関してビルトインフレキシビリティーがあります。Xcel (エクセル) チップに拡張された場合、コーナ部、ショルダー部および凹部への工具のアクセスがより良好なものになります。チップ形状と45度の切込み角のこの組合せは、径方向の切削抵抗も低減し、一定の切りくず厚さを実現して、境界摩耗を低減します。その結果m高い生産性、長い工具寿命および良好な安全性を達成します。

プログラムの最適化

プログラムの最適化は重要項目です。特に丸チップを使用する場合の性能アップに向けたいくつかの推奨事項を以下に示します。丸チップは、基本的に特殊な被削材に好適なものです:

  • パスへのプランジ加工を回避して、衝撃をやわらげてくださいこれらのパスが必要な場合は、送り速度を半分にしてください
  • ショルダー部への旋削加工の際は、送りも半分に下げるか、あるいは、プログラム半径がチップ径と同じになるよう工具をショルダー部へとロールアップする必要があります(ガイドラインは、最小プログラム半径がチップ径の約25%、ワーク半径はがチップ径の75%です工具センター送りはプログラム半径用です)
  • 丸チップによる荒加工の場合は、プログラム半径はチップ径と同じにすることができ、仕上げ加工の場合は、プログラム半径がチップ径より大きいことを確認してください
  • チップをフルに活用するために、代替工具パス、マルチパスおよび両方向への加工を検討してください
  • 加工物の加工前面取りおよび食いつき部への送りにより、セラミックチップを保護してください
  • 加工全体にわたり、チップ食いつきの弧に対する十分な切込み角バランスを維持してください角度の制限は優れた性能には不可欠です。また丸チップの使用は、最新チップ材種の可能性を十分に活かすためにも重要です
  • 倣い加工またはプランジ加工の場合は、チップへの過負荷にならないように、あらゆる巻き付き効果を回避し、代替工具パスまたはより小さなチップ径を用いてください
  • トロコイダル旋削加工および特にポケット加工の際は、パスを適当な小さなパスに分割することを検討してください

耐熱合金 (HRSA) およびチタンを加工するための工具タイプおよび加工方法に関しては、何を確認する必要がありますか?以下に、クーラントの主な特長を列挙します:

  • 高精度クーラントは、常に検討項目に含まれていなければなりません。クーラントスルーツーリングによって供給されて、刃先の背面と刃先で作用する高精度クーラントジェットは、旋削加工、フライス加工および穴あけ加工に適用できる多くのメリットがあります。さまざまな圧力範囲をカバーする、標準および特殊品ソリューションとして利用可能な最新のノズル技術は、適切なクーラント供給に対応しているすべてのタイプの機械に適用することができます。新しい機械への投資の際には、必ずチタンの旋削加工において良好な切りくず処理を促進する70 barのクーラント圧が可能なものでなければなりませんが、切りくずの切断がより難しい耐熱合金 (HRSA) 旋削加工には、最大200 barの圧力が有利です。


クーラントの使用は、特殊な被削材の加工の決定的な加工要因です。高精度クーラントの適用は、今日標準または特殊オプションとして提供される先端技術で、切削、切りくず生成、工具寿命および生産性に明瞭な違いが生ずるほどの効果があります。一般的に、これらの被削材において生じる高温は冷却される必要がありますが、クーラントが専用チップおよびスルーツールクーラントサプライと組み合わされて、十分な流量で、高圧で、適切な部位に向けて正確に供給されると、性能および加工結果が最適化されます。

  • 特殊な被削材の旋削ではアクセス性が問題になることが稀ではありません。複雑な特性および工具突出し量のため、ツーリングおよび加工方法を適切にすることが重要になります。さまざまな角度の刃先と突出し量がある工具ブレードを備えた信頼性の高いコンセプトが提供されているモジュラーシステムを見てみましょう。アダプタとブレードの選択肢の範囲は、限られた標準工具在庫工具から、構成に適合し、内径または外径の限られたスペースにおけるアクセス性を提供する工具まで、ほとんどどのような工具も取り付けられる柔軟性のあるものでなければなりません。ブレードには、工具内を通って刃先に供給される高精度クーラントを利用して、角度のある溝に深く届くために必要な径方向および軸方向クリアランスが必要です。
  • 工具材質はどの加工作業においても中心的な課題であり、特殊な被削材においては決定的に重要な要因です。この加工領域は、大抵の場合最新の超硬チップおよびセラミックチップとなる適切なブレーカと専用チップ材種との組合せを必要とします。ノンコート超硬材種はまだ重要なポジションを有していますが、チップコーティング技術における最新の開発が、加工時間の短縮と工具寿命の延長により刃先の能力を向上させた、特殊コーティングが施された超硬チップを出現させました。
  • びびり傾向を最小化するために、ボーリングバイト、ブレード、さらにはフライスカッターは、防振機能を備えている必要があります。防振テクノロジーは大きな飛躍を遂げており、工具突出し量が不安定な結果をもたらす傾向が顕著な場合、当然のオプションとなります。生産性、加工安定性およびワーク品質は、加工品質と防振工具の利用可能性に直接に関係するものです。多く加工は、この防振機能なしでは不可能です:今日では最大で径の14倍 (最大250 mm) の突出し量での内径旋削を、非常に効率的に、高レベルの仕上がりで行なうことができます。
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