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すばらしい新素材の世界

Stories2024年10月13日

身の回りにある機器やモノの多さにうんざりすることはないだろうか?多くの機能を持つ2~3個の製品で事足りるとしたら?アメリカのリーニン・ヤオ氏と彼女の共同研究者たちは、この夢を現実にする研究に取り組んでいる。

自動で足にフィットする靴。携帯電話に姿を変えるリストバンド。水につけると形や色が変化する花。飲み頃になると、丸まった状態から開いた状態になる茶葉。

長い間夢だったこれらのコンセプトや素材の実験が、マサチューセッツ工科大学 (MIT) メディアラボの石井裕教授が創設したタンジブル・メディア・グループで進められている。試作品段階に到達した製品の1つが「bioLogic」というファブリックで、納豆菌をベースとし、温度や湿度に反応する素材だ。この生地で作った衣類には組み込み式の呼吸する弁がついており、着る者の体温や湿度が高まると弁が開くようになっている。リーニン・ヤオ氏が率いる「bioLogic」チームのメンバーには、ウェン・ワン氏、グアンユン・ワン氏、ヘレーネ・シュタイナー氏、チン・イ・チェン氏、ジーフェイ・ウー氏、オクサーナ・アニリオニテ氏、アラーナ・ソーラ氏が名を連ねる。

リーニン・ヤオ氏はMITの博士課程4年目に在籍する大学院生である。共同研究者たちと共にこれらのコンセプト以外にも様々なテーマに取り組んでおり、ラボの研究者として未来の素材の実現にしのぎを削っている。自らのプロジェクトについて、Metalworking Worldのインタビューに答えた。

中国の内モンゴルで育ったそうですね。そこでの経験は現在の仕事にどのような影響を与えましたか?

コンピュータもテレビもない土地で、唯一の情報源は自然でした。例えば、よく森で松かさを採りました。雨が降った後、松かさは開いていますが、家に持ち帰って数日置いておくと、鱗の部分が閉じ始めます。松かさの鱗がとてもスマートな素材だと気づきました。鱗は開いたり閉じたりを何度も繰り返しますが、これは可逆的な変形で、空気中の湿気が刺激要因となって起こります。「bioLogic」の素材の機能原理に非常に近いものです。

今はどのような種類の素材に取り組んでいるのですか?

「bioLogic」プロジェクトでは納豆菌の詳細な研究を進めています。納豆菌は松かさと同様、空気中の湿度に応じて広がったり縮んだりします。また、数ミクロンのバクテリアを使い、色が変わる花や形を変えるランプシェードなど様々なものを作っています。その中で最も用途が広いのが、汗に反応して呼吸する衣類です。

他にはこれまでどのようなプロジェクトに関わってこられましたか?

「bioLogic」プロジェクトの前、私は研究員の新山龍馬氏、ジーフェイ・ウー氏、私の指導教官である石井裕教授と共同で空気圧ベースの素材を研究していました。主要素材の一つは、空気圧ユーザーインターフェースという名で、ソフトロボティクスの技術を応用したものです。携帯電話やランプ、iPadケースなど、柔らかい素材で、空気で膨らませることで形を変える構造物を作りました。言葉で説明するよりも、オンラインで公開されている動画を見ていただいた方がわかりやすいと思います(動画は下を参照)。

シューズのプロジェクトについて教えてください。

ニューバランス社の協力を得て、共同研究者のジーフェイ・ウー氏、ダニエル・タウバー氏と共に剛性が変化するシューズを開発しました。ニューバランス社のスポーツデザイナーは、シューズ製作に必要な様々なシナリオを提示してくれました。例えば、歩くときはシューズはできるだけ柔らかくなくてはなりませんが、走るときはサポート力が求められ、登山やハイキング用には、シューズの別の部分の剛性が必要です。問題は、シューズの異なる部分の剛性をどのように動的に調整するかということです。

これらのプロジェクトで商品化を進めているものはありますか?

私たちは研究者なので、製品の商品化よりも長期的なビジョンに関心があります。技術面で壁にぶつかることもあります。例えば、先ほどの衣類の生地は水洗い不可のため、オリンピックのようにシャツの使用が2、3日程度の特定の機会に1回限り着用することを想定しています。いつかこの素材が幅広く使用されることを願っていますが、市場にまで視野を広げることは考えていません。

ここ数年間、ご自身が「反応する素材」と呼ぶものに取り組んでこられましたが、の将来についてどのようにお考えですか?

反応する素材は、将来確実に興味深い役割を果たすでしょう。「反応する」という言葉で私が意味しているのは、素材自体が独自の振る舞いや知性を持ち始めるということです。環境の様々な刺激や、人間がどのように素材に触れることで相互に作用するかを感知して、それに反応して形、色、剛性や光学的、機械的または電気的な特性を変えるということです。例えば、着用者が歩いているのか、自転車を漕いでいるのか、ハイキングをしているのかをシューズが感知して、何らかの方法で着用者のニーズを計算し、動作をサポートするための異なる剛性をアウトプットします。あるいは、着用者が汗をかき始めると衣類がそれを感知し、自動的に弁を開いて対応します。体温が下がると弁が閉じ、再び体温を維持することができます。

あなたの取り組みは、持続可能な社会にどのように貢献するでしょうか?

反応する素材というアイデアは、1つのものを多様な場面で使用可能にします。私は工業デザイナーとしての教育を受け、デザインの異なる製品には異なる素材を選択することを学びました。2脚の椅子が必要だとしましょう。急いで朝食をとる朝は、食べ終わればすぐに立ち上がって出かけるために、快適な座り心地は必要ではありません。 しかし、夜くつろぐための椅子には、滑らかで柔らかい手触りのカウチが欲しいと思うでしょう。反応する素材の本質にあるのは、1つのものが異なる様々な場面に適応できるという発想です。用途に応じて5脚の異なる椅子を買う代わりに、1脚の椅子を買うだけでそれが自動的に剛性や形状を変えて調整できるようになるのです。研究はまだ予備段階ですが、十分な強度を持った素材が柔軟に適応できるとなれば、製品の購入必要数はきっと減少するでしょう。

素材産業に携わる人たちに何かアドバイスはありますか?

私は多分野にわたる研究機関で仕事をしているので、異なる専門分野間の交流はとても重要だと思います。多くの科学者は、デザイナーの仕事は彼らの発明を取り込みそれを装飾的にすることだと考えています。デザイナーは、自分たちを通常ユーザーと科学者との架け橋になる存在だと思っています。私自身にとっての発明は、他者の強みを理解することによる自然な尊敬から生まれます。科学者とデザイナーは、それぞれの考え方に基づく、独自の想像力を持っています。学際的な共同研究がさらに活発になることと、新しいことにチャレンジする人が増えることを期待しています。

動画

リーニン・ヤオ氏のプロジェクトと彼女たちが見出した新素材に関する動画はこちら。

アスペン研究所でのプレゼンテーション
MIT博物館でのトークイベント


Michael Miller
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