ねじ切り加工の公式と定義
このセクションでは、ねじ切り旋削加工、スレッドミリング加工あるいはタップ加工に対する切削速度、送り速度あるいはその他のパラメータを計算するためのねじ切り加工の公式と定義を説明しています。国際的な基準による種々のねじ形状の表記についても確認できます。
ねじ切り旋削加工の公式と定義
切込み
総切込み量を小さな切込みに分割することにより、チップの切刃のノーズR部分に過負荷がかからないようにします。
例:パスごとの切込み(ラジアルインフィード)の0.23–0.10 mm (0.009–0.004") を全切込み (ap) に含めることで、1.5 mm (0.06") ピッチのメートルねじを6パス (nap) でねじ山の深さ (0.94 mm (0.037")) に旋削します。


1パス目、切込み
0.23 mm

= 0.009"

2パス目、切込み
0.42–0.23 = 0.19 mm

0.017–0.009 = 0.008"

3 パス目、切込み
0.59–0.42 = 0.17 mm

0.023–0.017 = 0.006"

4 パス目、切込み
0.73–0.59 = 0.14 mm

0.029–0.023 = 0.006 inch"

5 パス目、切込み
0.84–0.73 = 0.11 mm

0.033–0.029 = 0.004"

6 パス目、切込み
0.94–0.84 = 0.10 mm

0.037-0.033 = 0.004"

切込みは以下の式で計算することができます:
Δap = ラジアルインフィード、パスごとの切込み
X = 実際のパス(1パスから切込み回数napまでの一連パス)
ap = 合計切込み量 + 余分な取代
nap = パス数
Y = 1回目のパス = 0.3
2回目のパス = 1
3回目以降のパス = x-1
ピッチ 1.5 mm (0.06")
ap = 0.94 mm (0.037")
nap = 6
γ1 = 0.3
γ2 =1
γn = x-1
記号 | 名称/定義 | ミリ | インチ |
ap | 合計切込み量 | mm | inch |
n | スピンドル回転数 | 毎分回転数 (rpm) | 毎分回転数 (rpm) |
Vc | 切削速度 | m/min | |
nap | パス回数 |

- 谷底/底面
ねじの2つの隣接する逃げ面を結合している底面 - 逃げ面/側面
ねじの谷底と頂きを接続するねじの側面 - 頂き/頂面
2つの側面または逃げ面を結合している頂面
P = ピッチ、mmまたは山数/インチ (t.p.i.)
軸と平行に測ったねじ山の1点から次のねじ山の相当する点までの距離
β = ねじ山角度
軸面で測ったねじの逃げ面間の角度
φ = ねじのアプローチ角 (ねじれ角)
軸に垂直な面でのピッチ径のねじ山の角度
径パラメータ

d = 外径、大
D = 内径、大
d1 = 外径、小
D1 = 内径、小
d2= ピッチ径、外
D2= ピッチ径、内
ねじの有効径、おねじの外径とめねじの内径とのほぼ半分の距離。
アプローチ角(ねじれ角)
アプローチ角、φ、(ねじれ角) はねじの直径とピッチに依存し、関連しています。この大きさは、部品から削り取られた三角形として表すことができます。アプローチ角は以下の式で計算されます。

アプローチ角計算のための公式。
N = 加工開始数


同じピッチでも径が異なればアプローチ角も異なります。
スレッドミリング加工の公式と定義
切削速度 (vc)
メートル(m/min)

インチ (ft/min)

めねじのスレッドミリング加工の公式
計算式
外周送り (mm/min) (inch/min)

径方向切込み (mm)(inch)

工具中心送り (mm/min) (inch/min)

刃当たり送り (mm)(inch)



スレッドミリング加工、ロールインツールパス、Dvf1
おねじのスレッドミリング加工の公式
計算式
外周送り(mm/min)(inch/min) ![]() | 工具中心送り (mm/min)(inch/min) ![]() |
刃当たり送り (mm) (inch) ![]() | ![]() |
![]() |

タップ加工の公式と定義
ミリ | インチ |
スピンドル回転数 (n) (rpm) ![]() | ![]() |
送り速度 ![]() | ![]() |
トルク (Md) (Nm) ![]() |
動力 (P) (kW) ![]() |
パラメータ | 意味 | 単位 | インチ法 |
Md | トルク | Nm | in.lb |
p | ピッチ | mm | inch |
D / DC | 呼び径 | mm | inch |
kc | 比切削抵抗 | N/mm2 | lbs/in2 |
n | スピンドル回転数 | rpm (rev/min) | rpm (rev/min) |
P | 動力 | kW | hp |
vc | 切削速度 | m/min | ft/min |
vf | 送り速度 | mm/min | in/min |
穴寸法の公式
以下の公式を使えば下穴寸法の計算を行うことができます。
切削タップの下穴径の基本計算
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転造タップの下穴径の基本計算
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![]() | |
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ねじ山の高さが与えられたときの切削タップの下穴径の基本計算
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ねじ山の高さが与えられたときの転造タップの下穴径の基本計算
![]() | |
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![]() | |
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パラメータ | 意味 | 単位 | インチ法 |
D | 穴径 | mm | inch |
TD | 呼び径 | mm | inch |
TP | ねじピッチ | mm | |
TPI | ねじピッチ(インチ) | inch | |
TH | ねじ山の高さ | % | % |
ねじ山高さ(パーセンテージ)の計算方法
ねじ山の高さ (%) は、めねじのねじ山の最大高さに対する実高さの割合です。下の例は、ISOおよびUTS規格(ねじ山の角度60°)に適応します。
例、M8x1.25
規格に準拠するねじ山の最大高さは6/8 Hです。
H = 0.866 x P
(H = 基本三角形高さ)
(P = ねじピッチ)
ねじ山の最大高さ:
6/8 * (0.866 x 1.25) = 0.811 mm
Ø6.9 mmの下穴のねじ山の実高さ:
(8 - 6.9) / 2 = 0.55 mm
よって、ねじ山の高さは (0.55 / 0.81) x 100 = 68%
ねじ山の実高さ 推奨下穴径 | ![]() ねじ山の角度60° 60° | めねじのねじ山の最大高さ (6/8 H) 規格による最小下穴径 |
国際的な基準によるねじ表記
国際規格
ねじ切り加工された2つの結合部(内径と外径)が適切にかみ合い、規定の荷重に耐えられるようにするには、ねじ山が一定の基準を常にクリアしなければなりません。そのため、一般的なねじ山形状についての国際基準が定められました。
ISOメートルねじの表記
ねじ表記は、ねじ形状と公差の値で構成されます。公差の数字は公差グレードを、文字は公差位置を表します。
例
M16 - 6h
M16:ねじ表記と呼び径
6h:ピッチとねじ山の頂きの公差等級
M10 x 1.25 5g6g
M10:ピッチ
1.25:有効径の公差等級
5g6g:ねじ山の頂きの公差等級
ねじ切り部分の適合度は内径ねじ公差等級とそれに続く外径ねじ公差等級によって表されます。2つの等級間には斜線が入ります。
公差位置
公差位置は、基準寸法に対する許容値を表し、めねじは大文字、おねじは小文字で示されます。公差グレードと公差位置を組み合わせたものが公差等級です。公差等級の値は、各ねじ切りシステムの規格の中で定められています。
ISOインチねじ (UNC, UNF, UNEF, UN)
ユニファイねじには、1(並目)から3(細目)までの3つの公差等級があります。一般的なユニファイねじは次のように表されます:
¼” 20 20UNC - 2A
¼” – ねじ径、第
20 – ピッチ値:ねじ山数/インチ (t.p.i.)
UNC – 並目ピッチを示します
2A – 中程度の公差を示します
ISO - ユニファイ (UN):
ゆるい公差:1A (おねじ)、1B (めねじ)
中程度の公差:2A (おねじ)、2B (めねじ)
厳格な公差:3A (おねじ)、3B (めねじ)
種々のユニファイ (UN) ねじ
UNC | 並目ピッチのねじ径 |
UNF | 細目ピッチのねじ径 |
UNEF | 超細目ピッチのねじ径 |
UN | 一定ピッチのねじ径 |
ウィットワースねじ(G, R, BSW, BSF, BSPF)
ウィットワースねじは、今日ではあまり使われませんが、ウィットワース管用ねじは国際基準として認められています。ウィットワース管用ねじには、おねじについて2種類、めねじについて1種類の公差等級があります。
ウィットワース管用ねじ:BSW、BSFおよびBSP.F
公差位置
細目:A (おねじ)、めねじ 1等級のみ
並目:B (めねじ)、めねじ 1 等級のみ
ウィットワース管用ねじの表記
次の2つのグループに分けられます。
- ねじ部の耐密性を主目的としない:ISO 228/1
- ねじ部の耐密性を主目的とする:ISO 7/1