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スレッドミリング加工のヒント

スレッドミリング加工で最良の加工結果を得るには、常に以下の点を考慮してください。

切削径の選択

切削径が短い方がより高いねじ加工品質が得られます。カッターの切込みにより、ねじ山形状の谷底部にごくわずかな形状誤差が生じることがあります。内径スレッドミリング加工では、ねじ切り径、加工径とピッチの関係が径方向切込みの実際の深さ(ae eff)に影響し、この深さが選択された径方向切込みよりもはるかに大きくなります。実切削幅がより大きくなると(ae)、ねじ山の谷底部の誤差が大きくなることがあります。ねじ山形状の誤差を最小にするために、カッター径(加工径)はねじ切り径の70%以下にしなくてはなりません。

例 30x3

21.7 mm径の工具の場合、ねじ山形状の誤差は0.07 mm (0.0027 inch)になります。

11.7 mm径の工具の場合、ねじ山形状の誤差は0.01 mm (0.0004 inch)になります。

スレッドミリング加工のツールパス

スレッドミリング加工のツールパスにより、右ねじまたは左ねじになります。ダウンカットまたはアップを使用します。スレッドミルのワークへのアプローチと逃がしは、常に滑らかなツールパス(ロールイン/ロールアウト)を適用してください。スレッドミリング加工には、X軸、Y軸、Z軸の同時3軸加工が可能な工作機械が必要です。ねじ山径はX軸とY軸で決定され、ピッチはZ軸で制御します。

ピッチ
 

右勝手内径ねじ加工

スレッドミリングは切削開始時、できるだけ穴の底の近くにセットし、ダウンカットができるように、反時計回りに上に向かって移動させます。

左勝手内径ねじ加工

左ねじフライス加工では、ダウンカットができるように、反時計回りに上から下に向かって移動します。

内径
右ねじ​ 左ねじ
ダウンカット
アップカット
外径
右ねじ​ 左ねじ
ダウンカット
アップカット
 
 

ダウンカット

  • ダウンカットとは、工具が工具回転方向に送られるフライス加工のことです
  • 工作機械、治具、ワークに問題がなければ、ダウンカットが常に推奨される方法です。
  • 切削開始から切りくずの厚さは減少し、終了時にゼロになります。これにより、カッター食いつき前の加工面に対する刃先の摩擦と発熱を回避します。
 

アップカット

  • アップカットでは、切削工具の送り方向はカッターの回転と逆になります。
  • 刃先はその抵抗に逆らって切り込まなくてはならないため、摩擦を伴ったこすりやバニシング作用が生じ、たいていの場合、前方にある刃により加工硬化面が発生します。これら全てが工具寿命を短くします
  • 抜け際での厚い切りくずは、工具寿命を短くします。
  • 抜け際で切りくずが過剰に厚かったり高温であると、切りくずが刃先にくっついたり溶着する場合があり、その場合次の切削開始時までそのままの状態になったり瞬時に刃先にコバ欠けが起きることがあります。
 

切削開始 - ロールイン

ヘリカル加工やランピング加工の場合は、切削に入る際、ゆっくりと送り始めます。これは、追加の回転を行うことで実現でき、カッターが被削材にゆっくり切込むようになります。切削を始める間は、4分の1回転 (90°) するごとに、ピッチを4分割しなくてはなりません。ゆっくりと切削に入ることは、びびりを回避し、工具寿命を延ばすために不可欠です。

 

刃当り送り

最高の加工品質を得るために、また、加工物の表面に送り傷が付くのを回避するために、1刃当たりの送り量は常に小さくします。刃当り送りが0.15 mm/刃 (0.006 inch/tooth) を超えないようにねじれ角を小さくします。

 

マシンソフトウェアに適した送り

工作機械のソフトウェアで定められたスレッドミリング加工 用の最適な送り速度を計算してください。送り値は常にhex値(ねじれ角)に左右され、外周送り速度に対応しています。しかし、通常多くの工作機械では、工具中心の送り (vf) を計算する必要があります。​ 内径スレッドミリング加工では、工具外周部のほうが工具中心線よりも高速で回転します。フライス盤では、ほとんどの場合、スピンドルの中心線に基づいて送り速度をプログラミングしています。工具寿命の短縮やびびりの発生、あるいは完全な機能停止を回避するには、この要素をねじ加工の計算に入れる必要があります。

 

パス回数

スレッドミリング加工を数回のパスに分割することで、より大きなねじピッチが加工でき、工具破損に対する安全性が向上します。数回のパスによるスレッドミリング加工では、工具のたわみが小さくなり、ねじ公差も改善されます。これにより、突出し量が長い場合や加工条件が不安定な場合の安全性が強化されます。硬化材や難加工材のスレッドミリング加工は、常に2回以上のパスで行ってください。

 

ドライ加工またはウェット加工

切削温度は、刃先が切削に入るときと切削から抜けるときに大きくなり、刃先に熱亀裂が生じるため、ドライ加工が常に推奨です。切削油の使用は、ステンレス鋼やアルミ合金の仕上げ加工、耐熱合金 (HRSA) の加工や鋳鉄の切削加工(有毒な粉塵を減らすため)の場合に有用です。切りくずの排出は、エアーブローを使用するのがもっとも効果的です。

 

切削条件で考慮すべき事項

  • 内径スレッドミリング加工では、ae(切削幅)は直線切削に応じて増加し、切りくずを薄くする効果が低下します。
  • 外径スレッドミリング加工では、径方向の切込みはより小さくなり、より高い切削速度での加工が可能になります。
  • ノーズRの切込角は90°です。これは、チップの最も繊細な部分なので、ねじれ角 (hex) は切込角90°で算出しなくてはなりません。

切削条件と値には、CoroPlus®ツールガイドを使用します

 

スレッドミリング加工穴サイズ

スレッドミルはタップ加工用と同じ穴サイズを使用します。公差を外れずにできる限り大きな穴を常に探します。これで安全な加工プロセスと長い工具寿命が保証されます。仕上げ刃付きチップを使用する際は、ねじ山の頂点を加工するために穴サイズを小さくする必要があります。

 

取扱い

ねじ止めチップを装着した工具ホルダの最高性能を発揮させるためには、常にトルクレンチを使ってチップがしっかりと取り付けられていることを確認してください。

  • 締付けトルクが高すぎると、工具性能に悪影響を与え、チップとスクリューの破損原因となります。
  • トルクの設定が低すぎるとびびりが発生し、加工精度が低下します
  • チップスクリューは定期的に交換してください。その際に、チップシートが清潔で、チップがずれる恐れのある障害物がないことを確認します。これらの点検はスレッドミリング加工 工程の信頼性を得るために不可欠です。
 
 
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