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新素材の時代 - 「未来」は今ここに

​​​The age of new materials is the future now

歴史を通して、様々な素材や最先端の材料技術が人類に大きな影響を与えてきました。まさに今、私たちは、これまでは思いもよらなかった製品や機能を可能にする、技術の次なる転換期を迎えようとしています。

産業のニーズによって、より軽く、タフで、薄く、密度や柔軟性あるいは剛性が高く、また耐熱性や耐摩耗性に優れた素材が求められています。同時に、可能性の限界を超える試みのために、研究者は既存の素材の改善や性能強化に取り組んでいます。一方、全く新しい素材を発見することで、たとえ何年間も日常的には使用されなくても、私たちを全く新しい技術の道へと導いてくれます。

可能性は無限

現在進んでいる応用材料科学の研究は、新しい、ほとんどサイエンスフィクションに近いと言える方向へと向かっています。資源の枯渇が迫る中、イノベーションや従来の常識を破る、革新的な発想が必要となります。素材の最先端では、軽量、高強度、耐久性など、望ましい様々な特性をもった複合材が市場シェアの大部分を占めようとしており、再生可能な資源へのニーズが大きくなるのに伴って、さらにシェアは拡大していくでしょう。この領域において、最も有望で重要な素材がグラフェンです。

グラフェンは原子1個分の厚さ(髪の毛の100万分の1)ですが、重さで比べると鋼鉄の200倍の強度があり、極めて柔軟性に高く、超軽量かつほぼ透明な物質で、熱伝導性と導電性に優れています。まさに伝説の素材です。

近年、中国の天津にある南開大学の研究者は、スポンジ状のグラフェンが光を浴びると駆動力を生むことを発見しました。これによって、人類は太陽光で航行できる燃料ゼロの宇宙船に一歩近づいたと言えます。

グラフェン革命に向かって

グラフェンは、イギリス、マンチェスター大学のアンドレ・ガイム教授とコンスタンチン・ノボセロフ教授が2004年に鉛筆と粘着テープで実験を行っていた際に、ほとんど偶然に発見されました。2010年に、ガイム教授とノボセロフ教授のグラフェン研究に対してノーベル物理学賞が授与され、これに続き、EUは10億ユーロ (約1,250億円) を投じて「グラフェンフラッグシップ」を立ち上げました。これは、グラフェンの商業応用の開発を推進するための研究支援イニシアチブです。応用の可能性がある領域は、浄水システムやエネルギー貯蔵から一般家電製品、コンピュータやその他の電気製品にまで及びます。グラフェン関連の特許が何千単位で増加する一方で、高価な製造コストにより、産業分野でのグラフェンの活用は限定的です。しかし、この状況もいずれ変わるでしょう。グラスゴー大学の研究者は、既存の製造方法と比べて約100分の1のコストで大型のシート状のグラフェンを製造する方法を発見しました。

この研究開発からの派生が期待される、多くの可能性のうちの1つとして、義手や義足の装着者に感覚フィードバックを提供できる人工合成皮膚が挙げられます。「グラフェン製の極度に高い柔軟性と導電性を持つ皮膚表面によって、義手や義足の装着者が触覚を感知することができます。これは、今日の最先端の義手・義足技術でも不可能な方法です。」と、グラスゴー大学の研究チームを率いるラヴィンダー・ダヒヤ氏は述べています。

金属の終焉?

金属は製造業の中心を占め、人間の歴史におけるあらゆる時代を規定してきました。長きにわたる使用によって、情報や知識が豊富に蓄積されましたが、科学者や研究者は金属素材の限界をさらに超える取り組みを続けています。この研究で重要な位置を占めるのがナノ物質で、金属の可能性を拡張し、新しい適用領域を切り開くものです。部分的にカーボンナノチューブやナノ粒子で構成される、金属基ナノ複合材の開発は、航空宇宙産業での軽量化の新たな時代を先導すると共に、強度や剛性の向上をも実現することができるでしょう。

破損したら、自分で修復

ナノ複合材の研究は、人間の体が自然治癒するように、自ら修復可能な金属の可能性を切り開きつつあります。アメリカ、イリノイ大学ベックマン研究所の自律材料システムグループは、自己回復機能を持つ繊維複合材の研究に取り組んでいます。これは、複合材自体に回復するための物質が含まれ、破損が検知されるとその物質が混合・重合されるというものです。

「自己回復する素材が生まれようとしています。」と科学者のマーク・ミオドウニクは言います。今のところ、技術的に可能なことが経済的な合理性も持ち合わせるというレベルには達していませんが、航空機の主翼から自転車のフレーム、車両や乗員の安全に不可欠な自動車部品まで、その場でなんでも修復できる可能性は、すぐそこまで近づいています。製品開発、ライフサイクルや持続可能性も大きな影響を受けるでしょう。さらに研究者は自己修復可能な道路の開発も進めています。これによって、人員不足で過労を重ねた整備作業員を待つ必要もなくなります。

自然をしのぐ特性

何千年もの間、材料科学は自然界にある多くの物質を偶然的に発見することによって、前進を続けてきました。今日の研究者は、自然界にあるものを先を見据えて、様々な既存の物質や素材の一部を組み合わせ、内在構造やパターンに焦点を当てて取り組むことで、自然界に存在しない、あるいは少なくともこれまで発見されていない特性を生み出そうとしています。

このような研究開発の1つが、サメの皮膚に類似した、指紋稜線の配列パターンです。シャークレットと名付けられたこのマイクロパターンは、バクテリアの定着や伝播を防ぐもので、病院や医療施設での使用に向けて開発が進められています。

不可視性に関連した素材開発もあります。数か国の物理学者が取り組んでいるのが、物体を不可視の状態にする有望なメタ物質の研究で、物体の周辺にある光などの電磁放射線を曲げる物質によって、その物体を覆い隠し、実際にはそこにないかのような錯覚を生み出すものです。

最も重要な持続可能性

材料科学、新素材の開発や既存の素材の改善は、資源不足や持続可能性が問題となる領域において、重要な役割を果たすものと考えられています。例えば、光を吸収する建築材料などの新素材は、地球温暖化の抑制に貢献するでしょう。

私たちが直面しようとしている新しい時代は、デジタル化やモノのインターネットだけでなく、何よりも、新素材、すなわちより簡単で、安全で、持続可能な私たちの未来を作ることができる素材によって特徴づけられます。可能性は本当に無限です。

 
 

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